FXの経済指標とは? 読解ポイントや重要指標、トレード戦略を解説

FXの経済指標とは? 読解ポイントや重要指標、トレード戦略を解説

FX取引において「経済指標」は、為替相場を見極める上で非常に重要な情報です。経済指標はその国の経済状況を表す統計データであり、為替レートに大きな影響を及ぼす可能性があるからです。そこで本記事では、経済指標を読み解くポイントや注目すべき経済指標などについて解説します。

【この記事でわかること】

  • 経済指標の概要や読解ポイント
  • 為替市場が注目する重要経済指標
  • 経済指標の発表時のリスクと有効なトレード戦略

経済指標を読み解き、トレードに活かしたい方はぜひ参考にしてください。

経済指標の基本

経済指標の基本

まずは経済指標の概要と経済指標が為替レートを動かす理由を解説します。

経済指標とは

経済指標とは、各国の公的機関や中央銀行などが定期的に公表する、雇用・景気・消費などの状況を数値で表した統計データのことです。ニュースでも報じられる「国内総生産(GDP)」や「失業率」なども経済指標の一つです。

その国の経済状況を反映する経済指標は、FX取引とも大きな関わりがあります。特にファンダメンタル分析(※)を行うFX投資家にとって経済指標の良し・悪しは、今後の為替動向を予測する上で極めて重要な判断材料になります。

※ファンダメンタル分析:各国の政治動向や経済情勢など基礎的な要素に基づいて相場や価格の動向を予測する分析手法

関連記事リンク:FXのファンダメンタル分析とは?テクニカル分析との違いや、分析対象、注意点を解説!

経済指標が為替レートを動かす理由

では、なぜ経済指標が為替レートを動かすのでしょうか。それは、経済指標がその国の金融政策の方向性に大きな影響を及ぼすためです。

金融政策とは、中央銀行による物価安定を図るための政策のことです。その一つに「政策金利(物価等の調整のために中央銀行が設定する金利)の変更」がありますが、この政策金利の上げ下げが、通貨の価値、つまり為替レートを左右する重要な要素になります。なぜなら、世界中の投資マネーはより金利の高い運用先に流入し、金利の低い運用先から抜ける傾向があるからです。

例えば、物価の変動を表す経済指標「消費者物価指数(CPI)」の数値が予想以上に高かった場合、FX投資家の間では「予想よりも中央銀行が早くに政策金利を引き上げるかもしれない」という思惑が強まります。その結果、その国の通貨の価値が買われ、為替レートが動くのです。

なお、市場予想よりも強い経済指標が発表されればその国の通貨は買われ、逆に弱い結果となれば売られる傾向にあります。経済指標の「予想値」と実際の「結果」の乖離が為替レートの変動を生み出す要因とも言えるでしょう。

経済指標の見方や確認方法

経済指標の見方や確認方法

続いて、経済指標の見方やその確認方法を解説します。

経済指標を読み解くために必要な3つの数値

経済指標を読み解く上で必要な3つの数値は以下の通りです。

  • 前回値:前回発表された数値のこと。前回と比べて今回の結果がどの程度改善、あるいは悪化したのかを把握できる
  • 予想値:市場から予想されている数値のこと。予測値と結果が大きく異なる「サプライズ」の度合いを推し量れる
  • 結果:今回発表された数値のこと。上記同様、サプライズの度合いを推し量り、為替レートの変動を予測する一助となる

FX投資家はすでに予想値を織り込んで売買しているケースが少なくありません。そのため、結果が予測値と大きく乖離した場合に、為替レートが急激に変動することがあります。

経済指標の確認方法

前回値、予想値、結果を含む経済指標に関する情報は、FX会社や証券会社のウェブサイトにある「経済指標カレンダー」や「経済ニュース」などで確認できます。

なお、LINE FXでは以下に経済指標に関連する情報を掲載しています。

関連リンク:イベントカレンダー
関連リンク:経済指標・イベント見通し

LINE FXには「LINE通知機能」という独自の便利な機能があります。さまざまな項目のうち「経済指標通知」を登録しておくと、重要な経済指標の発表前後にその予想値と結果をお知らせします。

関連リンク:LINE通知機能

FX取引で注目すべき経済指標や重要国

FX取引で注目すべき経済指標や重要国

経済指標の種類は非常に多いため、ここではFX取引をする上で最低限押さえておきたい経済指標を4つのカテゴリーに分けて解説します。

金融政策関連:各国の政策金利

為替レートに大きな影響を及ぼす金融政策関連で特に注目したいのが、各国の「政策金利」です。先述した通り、政策金利と為替レートの相関関係には以下の傾向があります。

  • 政策金利の高い通貨:買われやすい(高くなりやすい)
  • 政策金利の低い通貨:売られやすい(安くなりやすい)

また、政策金利を引き上げることを「利上げ」、引き下げることを「利下げ」と言います。為替レートは「いつ、どれくらい利上げや利下げが行われるか」を織り込みながら推移しています。そのため、要人発言等で市場の利上げあるいは利下げへの期待値が変化すると、為替レートが大きく変動することがあります。

<政策金利の変更で為替レートが動いたケース>
2024年7月31日、為替市場の見通しとは異なり、日本銀行は利上げを決定。サプライズと受け止められ、その後急速に円高が進んだ。

なお、金融政策・政策金利の見通しについては金融政策・各国見通しで確認することができます。

雇用関連:米国雇用統計

雇用関連というカテゴリーだけでなく、FX投資において最も重要な経済指標の一つが、原則第1金曜日に発表される「米国雇用統計」です。米国雇用統計とは、米国の雇用状況を調査した統計のことで、「失業率」と「非農業部門雇用者数」が特に注目されています。

また米国雇用統計の結果による米ドル/円への影響は以下の傾向があります。

  • 市場予想より結果が良い場合:米国の利上げ思惑が強まり、円安ドル高になりやすい
  • 市場予想より結果が悪い場合:米国の利下げ思惑が弱まり、円高ドル安になりやすい

ただし、為替市場がすでに結果をある程度織り込んでいる場合などには、必ずしも上記の傾向通りに動くとは限りません。そのためLINE FXでは、米国雇用統計の為替レートへの影響について、LINE FXディーリング部の見解を米国雇用統計にて公表しています。

雇用関連:米国雇用統計
キャプション:2025年7月の米国雇用統計(8月1日発表)に絡む為替レートの見解

もちろんこの見解通りに為替レートが動くとも限りませんが、プロの意見をぜひトレードの参考材料にしてください。

関連記事リンク:米国雇用統計

景気関連:国内総生産(GDP)

景気関連では「国内総生産(GDP)」に着目しましょう。国内総生産(GDP)とは、国内で生み出された付加価値の合計のこと。日本では四半期別GDPの一次速報が5月・8月・11月・2月の中旬に公表されます。

GDPの結果と為替レートの関連には以下の傾向があります。

  • 市場予想より結果が良い場合:経済が成長していると判断され、その国の通貨が高くなりやすい(買われやすい)
  • 市場予想より結果が悪い場合:経済が停滞していると判断され、その国の通貨が安くなりやすい(売られやすい)

また、経済の伸びを確認するために、前期や前年の前回値と比べた「GDP成長率」にも把握しておくとよいでしょう。

物価関連:消費者物価指数(CPI)

物価関連で注目したいのが、物価の変動を表す経済指標である「消費者物価指数(CPI)」です。日本では、毎月19日を含む週の金曜日に発表されます。消費者物価指数の為替レートへの影響について、一般的な傾向は以下の通りです。

  • 市場予想より結果が良い場合:利上げ思惑が強まり、その国の通貨が高くなりやすい(買われやすい)
  • 市場予想より結果が悪い場合:利下げ思惑が弱まり、その国の通貨が安くなりやすい(売られやすい)

消費者物価指数の結果が市場予想よりも良い場合、その国の中央銀行が物価の上昇を抑えるために「利上げを行うのではないか」という思惑が強まり、その国の通貨が買われて高くなる傾向があります。一方、市場予想よりも結果が悪い場合には、景気対策として「利下げを行うのではないか」という期待が強まり、その国の通貨が売られやすくなると言えます。

主要国の重要経済指標まとめ

FXにおいて、経済規模の大きな米国・ユーロ圏、そして自国である日本の経済指標は特に重要です。その中でも重要な経済指標をまとめました。

米国 ユーロ圏 日本
金融政策関連 政策金利(FOMC) 政策金利(ECB理事会) 政策金利(金融政策決定会合)
雇用関連 ● 米国雇用統計
● ADP雇用統計
ユーロ圏失業率 完全失業率
景気関連 ● 国内総生産(GDP)
● ISM製造業・非製造業景況指数
● 米国小売売上高
● ユーロ圏GDP(域内総生産)
● ユーロ圏小売売上高
国内総生産(GDP)
物価関連 消費者物価指数(CPI) ユーロ圏消費者物価指数(HICP) 消費者物価指数(CPI)

特に世界一の経済大国である米国の経済指標は、米ドル以外の通貨をトレードするFX投資家にとっても重要です。政策金利の決定にも影響を及ぼす「米国雇用統計」や景気の先行指標である「ISM製造業景況指数」および「ISM非製造業景況指数」、米国のGDPの約7割を占める個人消費の動向を表す「米国小売売上高」など、世界の為替相場に影響を与える経済指標が数多くあります。

主要国の重要経済指標まとめ

なお、LINE FXのイベントカレンダーでは、上記の通り経済指標の重要度を★1~5で表しています。為替市場がどの経済指標を注目しているのか、★の数で簡単に確認することができます。

経済指標の発表時のFX取引で注意すべき3つのリスク

経済指標の発表時のFX取引で注意すべき3つのリスク

続いて、FX取引をする上で不利になりかねない、経済指標発表時に高まりやすい3つのリスクを解説します。

ロスカットのリスク

ロスカットとは、投資家の損失が一定水準(ロスカット水準)を下回った時点で、保有しているポジションが強制的に決済される仕組みのことです。さらなる損失拡大から投資家の資産を守るために設けられています。

経済指標の発表時には、ロスカットが執行されるリスクが高まります。予測値と大きく乖離した経済指標の結果が発表されて為替レートが大きく変動し、想定とは逆に動いた場合にはロスカット水準を下回る可能性が高くなるためです。

ロスカットは損失拡大防止の観点から重要ですが、有無を言わさず強制的に決済が執行される仕組みでもあります。そのため、為替レートの変動幅によっては自身が設定した損切りラインよりも不利なレートで決済され、不本意なトレードになるリスクがあります。

もし明確な目的があって経済指標の結果発表前後にポジションを持ちたい場合、ロスカットのリスクを下げるために以下2つのポイントを実践しましょう。

  • 資金額に余裕を持たせておく
  • 取引数量を調整する

ロスカットに関しては、以下の関連記事もご確認ください。

関連記事リンク:FX取引で必要な証拠金(保証金)とは?証拠金維持率の計算方法や注意点を解説!
        ロスカットについて

スプレッドの拡大リスク

「スプレッド」とは通貨を買う時のレートと通貨を売る時のレートの差のことです。FXにおける実質的な手数料にあたります。

スプレッドの拡大リスク

例えば上記は売りレート「140.20」と買いレート「140.25」の差である「0.05」がスプレッドです。

スプレッドは狭ければ狭いほど、取引コストが低いことになるため、FX投資家には有利になります。一方、経済指標の結果発表時には、売りまたは買いのどちらかに注文が偏ることがあり、その結果、スプレッドが急拡大することがあります。特に「米国雇用統計」や「消費者物価指数(CPI)」など市場が注目する経済指標の発表直後はその傾向が強くなります。

関連リンク:FXでかかる実質的な手数料“スプレッド”とは

スリッページの発生リスク

「スリッページ」とはユーザーが注文したレートと実際に注文が成立したレートの乖離のことです。例えば150.00円で注文を出したものの150.02円で約定した場合、0.02円のスリッページが発生したことになります。

スリッページが起こるのは、FX投資家の注文がFX会社のサーバーに到達して注文が処理されるまでにタイムラグが存在するからです。このタイムラグの間に為替レートが変動すると、注文したレートからズレたレートで注文が成立し、スリッページが発生してしまうことがあるのです。そのため、経済指標の結果により値動きが激しくなるタイミングほど、スリッページに注意が必要です。

なお、LINE FX含めFX会社のツールでは、注文時にスリッページのズレ幅をどこまで許容するかを設定する機能があります。とくに重要な経済指標発表時には同機能の利用も検討しましょう。

関連リンク
スリッページが発生する可能性はありますか?

経済指標の発表時のリスクを抑えたトレード戦略

経済指標の発表時のリスクを抑えたトレード戦略

値動きが激しくなる傾向にある経済指標の発表時、FX初心者はどのようなトレード戦略を検討したらよいのでしょうか。

経済指標の発表直前のポジション保有は避ける

経済指標の発表直前のポジション保有を控えることで、結果発表後の乱高下に巻き込まれるリスクを軽減することができます。

特に、市場が注目する重要な経済指標の発表直後は、為替レートの方向感が定まらずに「上昇(下降)トレンドが形成されたと思った矢先に暴落(暴騰)した」といった状況も生まれやすくなります。そのような場面では、相対的に投機性の高いトレードになってしまいかねません。

FX初心者は経済指標に対する市場の反応が一巡し、トレンドの方向性が定まり始めてからトレードに臨むのが賢明でしょう。

感情的なトレードを避ける

経済指標の結果により為替レートが大きく変動すると「この流れに乗り遅れたくない」「ここで損失を取り戻したい」といった気持ちが強くなるかもしれません。しかし、そうした感情に任せたトレードでは、普段より大きなポジションを取ったり、損切りを先延ばしたりと、リスクの高いトレードになってしまいがちになります。思わぬ損失を避けるためにも感情的なトレードは控えるようにしましょう。

なお、感情的なトレードにおいて心配されるのが、損切りが遅れることです。その対策として、FX取引でポジションを取った際には、その逆指値注文も入れておきましょう。逆指値注文とは、現在のレートよりも不利なレートになった際に注文を出す方法のことです。逆指値注文を活用することで「レートが○○になったら損切りする」といった、損切り目的の注文を事前に出すことができます。

よくある質問(FAQ)

最後に経済指標に関するよくある質問を4つまとめました。

Q
経済指標とは何ですか?なぜFX取引で重要なのでしょうか?
A

経済指標とは「国内総生産(GDP)」や「失業率」など、経済状況に関する統計データのこと。経済指標の発表直後は為替レートが大きく変動することがあるため、取引チャンスになり得ると同時にリスク管理の観点からも重要です。

Q
経済指標の結果を見る際、特に注目すべき数値は何ですか?
A

前回値、予想値、結果の3つの数値に注目しましょう。とくに為替レートは予想値と結果の乖離の大きさによって変動しやすくなります。

Q
FXで重要な経済指標は、どのような種類に分けられますか?
A

金融政策関連、雇用関連、景気関連、物価関連に分類されます。例えば、景気関連の経済指標には「国内総生産(GDP)」が、物価関連の指標には「消費者物価指数(CPI)」が該当します。

Q
最も注目すべき経済指標は何ですか?
A

世界一の経済大国である米国の経済指標です。その中でも、同国の金融政策の方向性にも影響を与える「政策金利」や「米国雇用統計」に注目しましょう。

まとめ

FX取引において、経済指標を把握し、活用することは極めて重要です。経済指標は各国の経済状況を示すデータであり、予測値と結果の乖離が為替レートを大きく動かす要因になる可能性があります。経済指標の中でも「各国の政策金利」や「米国雇用統計」「消費者物価指数(CPI)」などは注目度が高く、結果次第で為替相場が急変することもあるでしょう。

また、これら重要な経済指標の発表直後には、ロスカットの実行やスプレッドの拡大、スリッページの発生などのリスクも高まります。そのためFX初心者は特に、明確な目的がない限り結果発表前後の売買は控えて、トレンドの方向性が定まり始めてからトレードを再開するとよいでしょう。

FX取引で利益を上げる可能性を高めるためにも、「米国雇用統計」に対するLINE FXディーリング部の見解や、経済指標・イベント見通しなどを参考にして、経済指標の読み解き方を身に付けてみてはいかがでしょうか。

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関連リンク:
経済指標・イベント見通し
イベントカレンダー
金融政策・各国見通し
米国雇用統計

監修者情報

伊藤亮太
伊藤亮太

ファイナンシャルプランナー、伊藤亮太FP事務所代表、スキラージャパン株式会社取締役

慶應大学大学院商学研究科修了後、証券会社にて営業・経営企画部門、社長秘書等を行う。また、投資銀行業務にも携わる。現在、資産運用と社会保障(特に年金)を主に、FP相談・執筆・講演を行っている。東洋大学経営学部ファイナンス学科非常勤講師、早稲田大学エクステンションセンター講師。CFP®認定者(日本FP協会)。

公式サイト:https://www.ryota-ito.jp/

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