
その国の政治動向や経済情勢などを踏まえて為替相場を分析する「ファンダメンタル分析」。テクニカル指標などを用いて過去の価格変動パターンから相場・価格動向を予測する「テクニカル分析」と組み合わせることで、トレードの幅が広がるといわれています。そこで本記事では、FXのファンダメンタル分析の基本について解説します。
【この記事を読むとわかること】
- ファンダメンタル分析の基礎情報
- ファンダメンタル分析とテクニカル分析の違い
- ファンダメンタル分析の分析対象
- ファンダメンタル分析をする際の注意点
トレードにファンダメンタル分析を活かしたい方は、ぜひ参考にしてください。
FXのファンダメンタル分析とは

FXのファンダメンタル分析とは、各国の政治動向や経済情勢など基礎的な要素に基づいて相場や価格の動向を予測する分析手法です。具体的には、金融政策や経済指標、要人発言などを総合的に分析して為替相場を予測します。
ファンダメンタル分析の具体例
- 利上げを行う日本と利下げを行う米国の金融政策の違いから、円高の進展を予測する
- 米国の経済指標の結果が予想以上に良いため、利上げペースが早まりドル高が加速すると予測する
- 日銀総裁から金融引き締めに前向きな発言があったため、円高が進むと予測する
ではファンダメンタル分析を行うメリット・デメリットは何でしょうか。
ファンダメンタル分析のメリット
ファンダメンタル分析で分析対象となる政治や経済の動向は、基本的には今日明日で急激に変化するものではありません。したがって、過去の価格や値動きなどから将来の価格変動を予測する「テクニカル分析」と比べると、より中長期的な視点で相場や価格動向を検討する際の材料となります。
言い換えると、相場の大きな流れを捉えるのに有効とされる分析手法といえるでしょう。
また、ファンダメンタル分析では「金融政策が転換したらトレンドが変わるだろう」「金融緩和に消極的な人物が日銀総裁になったら相場が転換するかもしれない」など、将来的に相場が変動し得る要因を念頭に置いてトレードができる点も特徴です。
そのほか、ファンダメンタル分析をするためには政治や経済の勉強をする必要があります。そのため必然的に「社会動向について詳しくなる」という副次的なメリットも期待できます。
ファンダメンタル分析のデメリット
有効なファンダメンタル分析をするためには、ある程度の勉強や経験が必要です。なぜなら、ファンダメンタル分析が分析対象とする政治や経済動向に関する情報は膨大であり、また解釈が難しいことも少なくないためです。
例えば、各国の要人発言は毎時間のように国内外で報道されており、経済指標も定期的に発表されています。これらすべての情報を逐一分析することは不可能であるため、ファンダメンタル分析では分析すべき情報の取捨選択をするスキルが求められます。
また、同じ情報でも有識者によって見方が分かれることがあるなど、情報の解釈が難しい場合も珍しくありません。そのため、勉強と経験を積み、有効な解釈をするスキルも身につけなければなりません。
ファンダメンタル分析とテクニカル分析の違い

FXにおける主な分析手法にはファンダメンタル分析のほかに、テクニカル分析があります。ここではテクニカル分析との違いについて詳しく解説します。
テクニカル分析とは
テクニカル分析とは、過去の値動きや出来高などを踏まえて、将来の価格変動を予測する分析手法です。主にチャートを用いることから「チャート分析」とも呼ばれ、テクニカル指標を用いて分析を行います。
テクニカル分析を行うメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット
- 過去の価格動向等を基に売買するため、政治や経済の知識が少なくても問題がない
- 頻繁に変化する情報を分析するため、短期的なトレードにも有効である
デメリット
- テクニカル指標が買いサインや売りサインなどのシグナルを発したものの、反対の動きをする「ダマシ」が起こり得る
- 突発的に重大ニュースが発表された場合、テクニカル分析が通用しない可能性がある
テクニカル分析はFX初心者でも取り組みやすい手法といわれています。しかし、それでも「ダマシ」を見分けたり、売買タイミングを図ったりするためには一定の知識やスキルが求められます。
関連記事リンク:FXのテクニカル分析とは?メリット/デメリットや指標の種類について解説!
ファンダメンタル分析とテクニカル分析の違い
ファンダメンタル分析とテクニカル分析は、分析方法や分析の目的、分析対象、分析期間に違いがあります。
ファンダメンタル分析 | テクニカル分析 | |
---|---|---|
分析方法 | 政治・経済の基礎的な要素を総合的に分析して、価格を予測する | 過去の値動きや出来高などを分析して、価格を予測する |
分析の目的 | 通貨間の本質的な価値の差を見定める | 市場心理や売買タイミングを見定める |
分析対象 | 政治・経済動向(金融政策や経済指標、要人発言など) | 過去の値動きや出来高などチャート上の情報 |
分析期間 | 中長期的なことが多い | 短期的なことが多い |
このような違いがある両手法ですが、どちらか一方の手法だけを利用する必要はありません。例えば、金融政策の変更や政権交代など政治・経済の転換点ではファンダメンタル分析が、それ以外の場面ではテクニカル分析が有効であるという見方もあります。
両手法を組み合わせることで、幅広い場面でより精度の高いトレード判断ができる可能性が高まることでしょう。
FXのファンダメンタル分析における分析対象

FXのファンダメンタル分析では政治や経済動向などさまざまな要素を分析します。具体的な分析対象は次の通りです。
- 経済指標
- 各国の金融政策
- 要人発言
- 地政学的リスク
ここでは各分析対象について、詳しく解説します。
経済指標
経済指標とは各国政府や中央銀行、シンクタンクなどが発表する経済状況を表す統計データのことです。例えば、国内総生産(GDP)や失業率、消費者物価指数(CPI)などが該当します。
経済指標はその国の経済規模や景気の良し悪しを示すデータであり、とくに重要な指標は金融政策や投資家心理などにも大きな影響を及ぼします。そのため、経済指標の結果によっては為替相場が大きく変動する可能性もあります。
とは言え、すべての経済指標が為替相場に大きな影響を及ぼすわけではありません。とくに重要だとされている経済指標としては、例えば以下が挙げられます。
米国雇用統計 | 失業率 | 国内総生産(GDP) | 消費者物価指数(CPI) | |
---|---|---|---|---|
概要 | 米国の雇用状況を調査した統計。中でも「失業率」と「非農業部門雇用者数が注目されている | 労働力人口のうち、失業者が占める割合 | 国内で生み出された付加価値の合計 | 物価の変動を示す指数 |
発表時期 | 原則第1金曜日(米国) | 原則毎月月末(日本) | 四半期終了日から2ヶ月後の中旬(一次速報)(日本) | 毎月19日を含む週の金曜日(日本) |
為替相場への影響(あくまで傾向) | 市場予想より結果が良い場合:米国の金利引き上げ思惑より、円安ドル高になる 市場予想より結果が悪い場合:米国の金利引き下げ思惑より、円高ドル安になる |
市場予想より結果が良い場合:経済が強いと判断され、その国の通貨が高くなる 市場予想より結果が悪い場合:経済が弱いと判断され、その国の通貨が安くなる |
市場予想より結果が良い場合:金利引き上げ思惑よりその国の通貨が高くなる 市場予想より結果が悪い場合:金利引き下げ思惑よりその国の通貨が安くなる |
ただし、市場の状況によって投資家が注目する経済指標は変わることもあります。
「今注目されている経済指標は何なのか」を知りたい方は、週ごとに注目すべき経済指標・イベントをまとめた以下のページも参考にしてください。
関連リンク:イベントカレンダー
関連リンク:経済指標・イベント見通し
各国の金融政策
金融政策とは、中央銀行が経済の安定と成長を図るために行う政策のことです。具体的には、マネーストック(通貨供給量)や政策金利の調整を指します。
金融政策の中でも政策金利を引き上げる「利上げ」および政策金利を引き下げる「利下げ」は、とくに為替相場に大きな影響を及ぼします。なぜなら、利上げによって金利が上昇すればその国の通貨が買われる傾向があり、逆に利下げによって金利が低下すればその国の通貨が売られる傾向があるためです。
なお、金融政策は定期的に中央銀行が発表しています。主要国で金融政策が決定される会合は、可能な限りチェックしておきましょう。
- 日銀金融政策決定会合:日本銀行が金融政策の運営に関する事項について決定する会合
- FOMC:日本の日本銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)による、米国の金融政策を決定する機関(会合)
- ECB理事会:欧州中央銀行がユーロ圏の金融政策を決定する機関(会合)
上記3つの会合はいずれも約6週間毎に年8回開催されます。例えば、2025年の日銀金融政策決定会合およびECB理事会は1月・3月・4月・6月・7月・9月・10月・12月に開催されます(FOMCのみ4月ではなく5月開催)。
各国の金融政策については、以下リンクも参考にしてください。
関連リンク:金融政策・各国見通し
要人発言
要人発言とは、金融市場に影響を及ぼし得る立場の人物の発言のことです。各国首脳や中央銀行の総裁、財務大臣、政府高官などが該当します。
要人の発言はその国の経済の指針を示すことがあり、為替相場にも大きな影響を及ぼします。例えば、2025年4月にはトランプ大統領が利下げ要求を求めたことで、円高・ドル安が一気に進みました。このように発言内容によっては為替相場が急激に変動することもあります。
なお、LINE FXには要人発言のほか、経済指標や金融政策などの情報を通知機能によりLINEで受け取れる機能が搭載されています。詳しくは以下を参照ください。
関連リンク:LINE通知機能
地政学的リスク
地政学的リスクとは、特定の地域が抱える政治的、社会的、軍事的な緊張の高まりが、経済に及ぼすリスクのことです。例えば、米中対立やロシアによるウクライナ侵攻、中東情勢の悪化などが地政学的リスクに該当します。
なお、こうした地政学的リスクが高まった場合、安全資産として捉えられている日本円が買われ、円高になる傾向が過去には見られました。しかし最近では円安が続くこともあり、地政学的なリスクが為替にどう影響するのかも含めて、注視していく必要があります。
ファンダメンタル分析を行う際の注意点

ファンダメンタル分析を行う際の主な注意点として、以下4つを解説します。
偏った情報だけにならないように情報収集する
ファンダメンタル分析に限った話ではありませんが、偏った情報だけをトレードの判断材料にしてはいけません。FXにおいて注意すべき偏った情報とは、例えば以下を指します。
- 断定口調で発信された情報
例:「必ず1米ドル=160円まで円安が進みます!」
- 売りまたは買いを煽るような情報
例:「1米ドル=130円に急落間近!すぐに売ろう!」
- 出典や出所が信頼できない情報
例:「知人の有名投資家が1米ドル=160円になると言っていた」
これらの情報はとくにSNSや動画サイト、掲示板などでよく見受けられます。中には参考になる情報もあるかもしれませんが、ファンダメンタル分析をする際にはこうした情報ではなく、政府の公式発表やFX会社・証券会社の発信、専門家の分析など、信頼性の高い情報源から複数の情報を収集することが大切です。
経済指標や要人発言が相場に影響が出ないケースもある
米国雇用統計や各国首脳の発言などは多くの投資家が注目しています。しかし、発表された内容が市場の予想とほぼ同じ場合、すでに発表内容を市場が織り込んでいるために、為替相場がほとんど動かないケースも珍しくありません。
つまり、重要な経済指標や要人の発言が必ずしも為替相場に影響を及ぼすとは限らない点には留意が必要です。
客観的に分析を行う
ファンダメンタル分析では希望的観測ではなく、可能な限り客観的に分析をすることが大切です。
ファンダメンタル分析はテクニカル分析と異なり、視覚的に分かりやすい売買シグナルがあるわけではないため、自身の主観がトレード判断に入り込む余地が大きくなります。しかし、収集した情報を自身にとって都合良く解釈をしてしまうと、ときに誤った判断をしかねません。
そのような事態を避けるためにも、複数の情報源を参考にするなどして、なるべく多角的かつ客観的な分析を行うことが重要です。
突発的な出来事には対応しづらい
大規模な自然災害や予想外の政権交代など、突発的な出来事によって政治や経済の流れが大きく変わることがあり、そのような場面では迅速なトレード判断が求められます。しかし、ファンダメンタル分析はさまざまな情報を一定の時間をかけて収集・分析する手法であるため、即時対応が必要な場面では有効に機能しにくい可能性もある点に注意しましょう。
一方、ある程度情報が揃ったタイミングであれば、ファンダメンタル分析を用いて突発的な出来事にも対処が可能だという見方もあります。突発的な出来事が起きた際にファンダメンタル分析を行う場合には、情報がある程度出揃うまで時間を置くことも必要でしょう。
よくある質問
最後に、FXのファンダメンタル分析に関する「よくある質問」を紹介します。
ファンダメンタル分析はどのように勉強できますか
FX会社が発信しているマーケットレポートなどで勉強できます。例えばLINE FXでは、ファンダメンタル分析の学習に役立つ情報を発信しています。
関連リンク:マーケット情報
ファンダメンタル分析を行うにあたって重要な指標や情報は何ですか
国内総生産(GDP)や米国雇用統計、消費者物価指数(CPI)などの重要な経済指標、各国の金融政策、要人発言などが挙げられます。政治や経済動向に影響を及ぼす情報をチェックしましょう。
まとめ
FXのファンダメンタル分析では、経済指標や金融政策、要人発言などを総合的に分析し、各国の政治動向や経済情勢などに基づいて相場・価格動向を予測します。
主に短期的には変わらない要素が分析対象であるため、中長期的な視点でトレードする際に役立てられます。短期的なトレードに有効なテクニカル分析と組み合わせたら、トレードチャンスをより広げられるでしょう。
ただし、偏った情報を基にトレードの判断をしたり、希望的観測で分析したりするのは危険です。信頼できる複数の情報源に当たり、多角的かつ客観的な分析を心掛けましょう。
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