両建てとは?FXにおけるメリット/デメリットや活用の場面を解説!

両建てとは、同一通貨ペアで買いと売りのポジションを同時に保有する取引手法です。この両建てについて、「両建てとはどんな取引手法なのか知りたい」「メリット・デメリットを教えてほしい」といった疑問を抱えている方は多いかもしれません。

両建ては相場変動に対するリスク管理手法として活用できますが、適切な場面で使用しないとコストが積み重なり、思わぬ損失につながる可能性があります。

本記事では、FXにおける両建て取引に関する重要な項目を詳しく解説しています。

【この記事を読むとわかること】

  • 両建ての基本的な仕組みと特徴
  • 両建てを行う際のデメリットやリスク
  • 両建てのメリットと活用できる具体的な場面
  • 証拠金管理やスワップポイントへの影響
  • 税金対策としての活用方法

FX取引でのリスク管理や取引戦略の幅を広げたい方は、ぜひ参考にしてください。

両建てとは

FX取引における両建ては、同一通貨ペアで買いポジションと売りポジションを同時に保有する取引手法です。

たとえば、米ドル/円で1万通貨の買いポジションを持ちながら、同時に1万通貨の売りポジションも保有する状態が両建てに当たります。

この取引手法は、一見するとデメリットがないように思えますが、実際にはコストやさまざまなリスクが伴い、経済的合理性を欠くため、LINE FXを含め、多くのFXサービスでは推奨されていません。

推奨されていない具体的な理由は、以下のとおりです。

  • 実質的な為替差益を得られない
  • 取引コストが上乗せされてしまう

両建ては、為替レートの変動に対して、どちらかのポジションで利益が出る一方で、もう片方のポジションで同額の損失が発生します。その結果、為替差益と為替差損が相殺され、実質的な損益はゼロとなってしまいます。

加えて、取引コストは買いと売りの両方で発生するため、通常取引時の2倍のコストがかかる可能性があります。

こうしたデメリットがあるため、両建てはあまり推奨されていません。

両建てのデメリットやリスク

The concept of global finance in an uptrend

FXでの両建てのデメリットやリスクに関して、さらに詳しく解説します。主なデメリットやリスクは次の通りです。

  • 取引コストが二重になる
  • スワップポイントで損をする可能性がある
  • ロスカットのリスクが増加する

FX 取引で両建てを検討しているのであれば、これらのデメリットやリスクを理解したうえで活用してください。

取引コストが二重になる

両建てでは、同一通貨ペアの買いポジションと売りポジションの両方を保有するため、取引コストが二重に発生してしまうデメリットがあります。

FX取引の主なコストは、次の2種類です。

  • 新規で両建て・決済を行うときに発生する スプレッド
  • 両建てによるスワップポイント

FX 取引では、買う時と売る時の値段が異なる「スプレッド」が存在します。そのため、新規で両建てをする場合には、買いと売りでスプレッドによるコストが発生してしまいます。つまり、両建ては通常の取引と比較するとコストが2倍かかることになります。

またFX取引では、売買する2ヵ国間の金利差から「スワップポイント」が得られる場合があります。スワップポイントは通貨ペア間の金利差から発生する損益のことです。そして、両建ては、一方がプラススワップ、もう一方はマイナススワップになるため、金利差の恩恵を受けられません。

両建てはポジションを重ねている分、余分にコストが発生してしまうのがデメリットです。


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手数料・スプレッド

スワップポイントで損をする可能性がある

両建てはスワップポイントの面でも、通常取引より損をする可能性があります。

通常のFX取引では、高金利通貨を買って低金利通貨を売ると、プラスのスワップポイントを 獲得できます。これを戦略的に実施すれば、利益を定期的に積み増すことも可能です。

しかし両建ての場合、買いポジションと売りポジションのスワップポイントが相殺されます。たとえば米ドルのスワップポイントが買いポジションでは168円、売りポジションでは178円の時、 10円のスワップポイントを支払うことになります 。

さらに、通常は買いポジションのスワップと売りポジションのスワップの間にもスプレッドが存在し、両建てをした場合には、受取スワップより支払いスワップの金額が多くなり、 スワップ損失が発生することになります。

このように、スワップポイントによって損失がさらに拡大するリスク がある点は、大きなデメリットです。

LINE FXのスワップポイントに関しては スワップポイントカレンダーをご確認ください。

ロスカットのリスクが増加する

ロスカットとは、投資家の損失拡大を抑制するための措置として、一定以上の損失が発生した場合、ポジションを強制的に清算する制度です。

両建てはポジションを重ねて保有するため、通常取引よりもロスカットのリスクが増加します。FX業者のサービス仕様によっては、両建てが別々のポジションとして区別され、証拠金が2倍必要になるためです。

たとえば、1万通貨の取引に必要な証拠金が5万円の場合、両建てでは10万円の証拠金が必要になります。

米ドル/円のレートが1ドル=145円から140円に急落した場合を考えてみましょう。この状況で必要証拠金10万円に対して、含み損5万円が発生すると、証拠金維持率は次のように計算されます。

証拠金維持率 =(預託証拠金10万円 – 含み損5万円)÷ 必要証拠金10万円 × 100 = 50%

このように、両建てでは必要証拠金が通常取引の2倍になることで、証拠金維持率が低下しやすく、ロスカットのリスクが増加します。

なおLINE FXでは、両建て時のロスカットリスクに備えて「MAX方式 」を採用しています。これは、同一通貨ペアの両建て時に、売り・買い建玉のうち建玉数量が多いほうに対して証拠金を算出する方法です。

LINE FXで両建て取引をする場合は、取引画面でFIFO機能(First In First Out、約定日時の古い建玉から決済対象とする決済方式のこと)をオフにする必要があります。ただし、経済合理性に欠く取引です。LINE FXでは推奨していませんので、お客様ご自身の判断でお取引ください。


よくある質問:両建て時のMAX方式とはどのような方式か教えてください。

両建てのメリット

A Electric bulletin board at the business town in Yaezu Tokyo at night. Chuo district Yaezu Tokyo Japan - 11.10.2020 : Translation on neonboard text Japanese Kanji charactor.

FX取引における両建ては、一般的には推奨されない取引手法ですが、特定の状況下では有効な手段として活用できる場合があります。

以下では、両建ての主なメリットについて解説していきます。

損失の拡大を防げる

両建ては、保有しているポジションの損失拡大を一時的に抑制する手段として活用できるメリットがあります。

たとえば、米ドル/円で買いポジションを保有している際に、為替レートが予想に反して下落し、含み損が発生したとします。

この時、既存の買いポジションをそのまま保有しつつ、新たに売りポジションを追加で保有することで、含み損を含み益でカバーできるため、損失が広がりません。

そして再び上昇に転じたタイミングで売りポジションを決済すれば、ロスカットされずに買いポジションを保有できるというわけです。

このように、現在保有しているポジションに含み損が発生している状況で、すぐに決済したくない場合に両建てが活用できます。予想に反して損失を抱えた際に、両建てによって損失の拡大を防げるのはメリットだと言えます。

両建てを活用できる場面

両建ては具体的にどのような局面で活かされるのでしょうか。ここでは両建てを活用できる場面について、以下4つを解説します。

  • 経済指標の発表など相場の動きが読みにくいイベントの前
  • レンジ相場で方向性が定まらないときや上昇・下降トレンドの転換点にあるとき
  • 年を跨いでポジションを保有したい際などのリスク回避
  • 長期と短期で別々のトレード戦略を持つ場合

それぞれ具体的に解説します。

経済指標の発表など相場の動きが読みにくいイベントの前

経済指標が公表されるタイミングにかけて の相場は急激な変動が起こりやすく、方向性を事前に予測するのは困難です。両建ては、このような動きが読めないイベント前の急変動リスクに対する防御策として活用できます。

たとえば、米国の雇用統計や政策金利の発表前などが代表的です。

経済指標発表後、相場の方向性が判明するまで両建てを活用すれば、片方のみポジションを保有している場合よりも損失リスクを下げられます。

もし、経済指標が公表されるタイミングにかけて トレードを行いたい場合は、両建てを活用してみるのもよいでしょう。

レンジ相場で方向性が定まらないときや上昇・下降トレンドの転換点にあるとき

FX市場では、相場が一定の価格帯を上下する「レンジ相場」や、上昇・下降トレンドの転換点において、方向性が不明確な局面に遭遇するケースもあります。

相場の方向感がないときは、両建てを活用することも手かもしれません。

たとえばレンジ相場では、一定の値幅で価格が上下を繰り返すため、どちらに動くか判断できません。そのため、上限付近で売りポジション、下限付近で買いポジションを保有して、レンジ相場の値動きに対応する手立てとすることができるかもしれません。

またトレンド転換の兆候を感じた時点で、既存ポジションとは逆方向のポジションを追加すれば、相場の方向性が明確になるまでリスクを抑えられるでしょう。

年を跨いでポジションを保有したい際などのリスク回避

両建ては、FX取引における税金の発生タイミングをコントロールする手段としても活用できます。利益を確定させるタイミングを翌年に調整すると、税金の支払いを調整できるためです。

FX取引で発生した利益は、取引を決済した年の所得として課税対象となるため、12月に含み益のあるポジションを保有している場合、そのまま決済すると当年の課税所得が増加してしまいます。

そのような場面で両建てを活用すれば、リスクを抑えて利益確定のタイミングを翌年に持ち越し、課税タイミングをずらす手法がとれるのです。年末付近で含み益があるものの、年内の利益にしたくない場合は、両建てを活用するのもよいでしょう。

ただし、年末年始は市場参加者が少なくなり、為替レートが大きく変動する可能性があります。そのため、証拠金管理を慎重に行う必要がある点にご注意ください。

なお、FXで発生する税金について詳しくは「FXの税金」をご覧ください。

長期と短期で別々のトレード戦略を持つ場合(つなぎ売り)

両建ては「つなぎ売り」と呼ばれる、長期と短期で別々のトレード戦略を行う場合にも活用できます。

つなぎ売りは、長期保有している買いポジションはそのままに、短期的な下落相場で利益を得るために売りポジションを追加する取引手法です。

たとえば、米ドル/円で中長期的な上昇トレンドを予想して買いポジションを保有している場合に、短期的な下落局面で売りポジションを組み合わせることで、短期の値下がり益も狙うことができます。

つなぎ売りを行う場合、管理の手間を減らすために同一口座を利用するのが一般的です。同一口座で行う場合は、一時的に両建て扱いになるため、自然と両建てを活用することになります。

まとめ

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FX取引における両建ては、同一通貨ペアの買いポジションと売りポジションを同時に保有する手法です。一定の条件下ではリスクを抑えられる 傾向にある一方で、以下の理由から一般的には推奨されていません。

  • 取引コストが二重になるから
  • スワップポイントで損失が発生する可能性があるから
  • ロスカットのリスクが増加するから

こうしたリスクを踏まえたうえで、経済指標が公表されるタイミングにかけて の相場変動リスクの回避や、方向性が読めないレンジ相場などでの利用、年を跨ぐ税金対策、つなぎ売りなど、必要に応じて活用するとよいでしょう。

なお、LINE FXでは「MAX方式」による証拠金計算を採用しており、取引画面でFIFO機能をオフにすることで両建てが可能です。

※経済的合理性を欠く取引となり、LINE FXでは推奨していませんので、お客様ご自身の判断でお取引ください。

両建ての活用を検討する際は、そのメリットとデメリットを十分に理解し、取引コストとリスク管理のバランスを見極めてください。

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監修者情報

伊藤亮太
伊藤亮太

ファイナンシャルプランナー、伊藤亮太FP事務所代表、スキラージャパン株式会社取締役

慶應大学大学院商学研究科修了後、証券会社にて営業・経営企画部門、社長秘書等を行う。また、投資銀行業務にも携わる。現在、資産運用と社会保障(特に年金)を主に、FP相談・執筆・講演を行っている。東洋大学経営学部ファイナンス学科非常勤講師、早稲田大学エクステンションセンター講師。CFP®認定者(日本FP協会)。

公式サイト:https://www.ryota-ito.jp/

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