FX用語である「フラッグ」「ペナント」という言葉について、その意味や特徴、活用方法について解説します。
FXのフラッグ/ペナントとは?
FXのフラッグやペナントとは、チャート上に現れる有名なチャートパターンの1つです。チャートの形がフラッグやペナントのような形になることから、このように呼ばれています。他のパターンと同様、今後の相場がどのように展開するか予測する際に用いられますが、フラッグ・ペナントはトレンド内における、ほとんど動かない保ち合い(もちあい)状態の形になります。
チャートを見ていると、特定の決まった価格(押し目、戻り)で何回も反発をしたり、一定の方向(上向き、下向き)へチャートが動いていたりするケースが多々あるでしょう。このパターンが四角いフラッグのような形、あるいは三角形のペナントのような動きになるものを、フラッグやペナントと呼ぶのです。この形を見つけることができれば、今後相場がどう変化していくのか予測しやすくなります。
フラッグの特徴
チャートに旗のような形が出現することをフラッグと言います。一般的に、フラッグは相場のトレンドの途中に出現する傾向があり、トレンドが継続する時に現れやすいものです。直近の高値・安値でチャネルラインを引くことによって、その出現を確認できます。ここでは、上昇フラッグ、下降フラッグについて解説します。
上昇フラッグ
上昇トレンドの途中で起こるものを上昇フラッグと呼び、上記の図のようなチャートになります。このように、保ち合いの中で上値と下値が少しずつ切り下がり、四角形の旗のような形になっているのです。上昇フラッグは、しばらくもみ合った後にチャネルラインを上に抜けると、再び強い上昇トレンドが発生しやすい特徴があります。
下降フラッグ
また、上昇フラッグの反対に、下降トレンドの中で起こるのが下降フラッグです。下降フラッグは上昇フラッグを逆さにしたような形になります。
上値と下値が少しずつ切り上がるのが特徴です。上下同じくらいの幅の範囲でしばらくもみ合った後、チャネルラインを下に抜けると再び強い下降トレンドが発生します。フラッグは、トレンドが継続する方向にブレイクしやすいとされています。このような保ち合いの形が現れた時には、ブレイクした後に直前のトレンドが継続しやすくなるでしょう。
ペナントの特徴
上昇トレンド時に起こる上昇ペナントと下降トレンド時に起こる下降ペナントがあり、それぞれ下図のような形になります。
上昇ペナント
大きなトレンドとしては上昇トレンドの中で発生し、高値・安値の幅がだんだん狭まっていき、三角形の頂点付近で上方向にブレイクしやすいと言われています。
下降ペナント
上昇ペナントとは逆に下降トレンドの中で発生し、同様に高値・安値の幅がだんだん狭まり、三角形の頂点付近で下方向にブレイクしやすいと言われています。
ペナントは上値・下値に届かない動きが続く方向感が出ない状態となっており、フラッグと同様にトレンドが継続しやすい時に現れやすいパターンとされています。三角形の旗のような形になることからペナントと呼ばれて、三角保ち合いの形の1つです。
また、ペナントの形は上昇ウェッジや下降ウェッジといった形にも似ているでしょう。上昇ウェッジは上方向に向かってペナントのような三角形が伸びていく形になっており、下降ウェッジは下方向に向かっていきます。相場が継続する形もあれば、トレンドの転換点に現れることもあります。
そのため、初心者は相場が転換する際に現れる上昇ウェッジと下降ウェッジの形をペナントと誤認してしまうかもしれません。その結果、直前のトレンドが継続するものだと考え、真逆の方向に相場が動くと誤って判断してしまうこともあります。そうならないよう、ペナントと上昇ウェッジ、下降ウェッジとの違いも理解しておくことも大切です。
フラッグとペナントの違い
フラッグとペナントは、どちらもトレンドの途中で現れる形です。しかし、図をご覧いただくと分かるように、保ち合いの形が異なります。
フラッグとペナントは、いずれもブレイクしたタイミングで直前のトレンドが続く可能性が高いとされています。そのため、直前の大きなトレンドがどちらを向いていたか確認しておくことが重要です。
フラッグの注意点
フラッグの出現頻度はあまり高くはありません。チャートパターンとしてフラッグが出現する機会は、それほど多くないでしょう。特に、普段からあまりラインを用いた分析手法を取り入れていないトレーダーにとって、フラッグが発生していることは気づきにくいかもしれません。
常にフラッグが出現するものとしてチャートを見てしまうと、あまり意味がない形もフラッグに見えてしまい、誤った判断をしてしまうことがあります。今まであまり気にしたことがなかった方は、フラッグのチャートパターンが出現した際に見逃さないくらいのスタンスで見ると良いでしょう。
これは、チャートパターン全体に言えることですが、完全に動きを予測することは難しく、フラッグにも当然ながら「ダマシ」が発生することがあります。自身のトレードスタイルによっても異なりますが、フラッグのチャートパターンを探す場合は、できる限り長い時間足を参考にした方が良いでしょう。フラッグが非常にきれいに形成されているからといって過信せず、他のテクニカル分析と組み合わせながら、また損切りのタイミングを決めて活用していくのがおすすめです。
注意したいのが、相場の値動きの中でフラッグがダマシとして発生した場合です。仮に相場が予測と反対方向に動いてしまった際は、早めに損切りできるようにあらかじめ逆指値注文を入れておくことも、トレード戦略として考えておきたいところです。特に、保ち合い相場が長く続いた時は、保ち合いを抜けた際の動きも強くなりやすいため、早めに損切りをしないと大きな損失に繋がるケースもあります。
フラッグの活用方法
大きなトレンドではどのように動いているか
フラッグを活用する際はこのような特徴をよく理解して、あくまでチャートパターンの1つとして考えることが大切です。まず、フラッグは相場の大きなトレンドの中で出現する傾向があることから、「大きなトレンドではどのように動いているか」を把握しましょう。
移動平均線やMACDといったテクニカル分析を活用し、大きな相場が「上昇トレンドなのか」「下降トレンドなのか」を捉え、チャートにフラッグが出現しているか探しましょう。その上で、次のように対応すればエントリータイミングを絞れます。
・上昇トレンド途中に出現したフラッグ
下方のチャネルラインのポイント(フラッグの下限)で買い注文を入れる
・下落トレンド途中に出現したフラッグ
上方のチャネルラインのポイント(フラッグの上限)で売り注文を入れる
フラッグのブレイクを狙ってブレイクアウトした方向にエントリー
また、フラッグのブレイクを狙ってブレイクアウトした方向にエントリーするチャンスもあります。そのため、自身のトレード戦略に合わせてエントリーポイントを変えると良いでしょう。フラッグが出現したものの、ネックラインもしくはサポートラインを割り込んでしまった場合は、損切りすることも忘れないようにしましょう。
フラッグを活用した逆張り
フラッグを活用した逆張り(ぎゃくばり)を行うことも可能です。フラッグは上限と下限の価格が一定の範囲で上下します。そのため、ブレイクして大きく価格が変動するタイミングではなく、フラッグの上限と下限それぞれの動きを読み、上限に到達した場合には売りでエントリー、下限に到達した場合には買いでエントリーすることです。
ただし、この手法で狙える利幅は非常に小さく、ラインをブレイクした場合には大きな損失が出る可能性もあります。スキャルピングなど短期での取引で、小さく利益を積み重ねていきたい場合にレバレッジを効かせて活用するのも良いでしょう。
注意点
注意点としては、予想に反してブレイクした場合の損切を忘れないことです。そして、他のテクニカル分析を併用して、ラインブレイクの可能性が低いポイントで行うようにしましょう。
フラッグがきれいに出現するとタイミングを過信し、大きな損をしてしまいがちです。予想に反して相場が動いた場合のことも忘れずに、他のテクニカル分析の手法と組み合わせることで動きを予想しやすくなります。
これはチャート分析のパターン全体に言えることですが、パターンを過信しないようにしましょう。フラッグは直前のトレンドを継続しやすい性質があります。予想に反することもあることを理解し、そういったチャートパターンの1つとして考えておくことが大切です。
他の分析手法との組み合わせで、予想が当たる確率が高まります。また、性質を利用して損切りのタイミングを決めておけば、予想に外れた場合の損失を抑えることもできるでしょう。そのため、組み合わせながら活用することで大きな損失を抑え、利益を積み重ねていくことに繋がるでしょう。
まとめ
ここまでフラッグとペナントの特徴や活用方法、注意点などを解説しました。FXはチャートパターンを見つけ、これから相場がどのように動くかを予想することが重要です。
そのパターンとして、フラッグやペナントがあります。これらの形を見つけることで、保ち合いが終わりブレイクした際にどのような動きになるのか、どのタイミングでブレイクするかなどを判断する材料の1つとなります。いずれも直前のトレンドが継続する際に発生しやすい形のため、これまでの大きなトレンドがどちらの方向であったかを読み取ることが必要です。反対に、フラッグの一定の上下幅の範囲で動く性質を利用して、短期的に利益を狙うのも良いでしょう。
なお、フラッグはあまり頻繁に出現するものではありません。そのため、無理に見つけようとして誤った判断をしないよう注意しましょう。ここで解説した特徴や注意点を理解し、チャートからパターンを見つけることで相場を予想して利益を狙いやすくなります。フラッグやペナントのみでなく、他のパターンも含めてチャートからパターンを読み取ることに慣れておけば、より予想の精度が高まり正確な判断ができるでしょう。
また、サポートラインやレジスタンスラインの引き方によってパターンを見つけにくかったり、パターンを誤認してしまったりすることもあります。きれいな形でパターンが出現することの方が珍しいため、慣れないうちは無理にパターンに当てはめようとして、パターンを誤って認識してしまうかもしれません。あるいはサポートラインやレジスタンスラインの引き方を誤り、ブレイクするタイミングを大きく見誤ってしてしまうこともあります。
まずは少額から始めてみて、しっかり損切りの戦略を立てた上でパターンを見つけて相場を予想することに慣れ、少しずつ取引額を増やしていくと良いでしょう。
チャートからパターンを読むことは、FXで利益を狙うためにとても重要です。その1つの形として、フラッグやペナントをうまく活用してください。
監修者プロフィール
小川 洋平(オガワ ヨウヘイ)
日本FP協会認定 CFP®、合同会社clientsbenefit 代表、FP相談ねっと認定FP、SG中越代表
<プロフィール>
25歳でお金の知識・営業経験ゼロから保険営業の世界に飛び込み6年半従事。2年目に将来の資産形成のため金融知識が必要なことに気が付き、FPの勉強を始めて金融・経済の知識を学ぶ。その後、保険に限らずあらゆるお金の面でクライアントにとってベストな提案をしたいという想いで、商品販売ではなく相談業務を開始。2013年より資産形成の考え方に関するセミナーを自主開催。その他、大手金融機関からの委託により実施。現在は小規模事業者の年金や資産運用のサポートを中心に相談・経営支援の業務に携わり、確定拠出年金など起業家の将来の資産形成と経営のサポートを行っている。投資信託や資産形成の分野を得意としている。