投資初心者にも使いやすいゴールデンクロスについて、注意点を踏まえながら効果的な使い方をご説明します。
ゴールデンクロスとは
ゴールデンクロスは移動平均線やMACDなどのテクニカル指標を参考にして見られるサインであり、売買の判断材料として活用されます。
具体的には、短期の移動平均線が長期の移動平均線を下から上に交差して抜けること。移動平均線はローソク足の後を追って動きますので、短期移動平均線が長期移動平均線を上に抜いた時点では、すでにローソク足は上昇トレンドになっていることが多いと考えられます。そのため、ゴールデンクロスは買いエントリーに適しているタイミングです。また、売りのポジションを持っているのであれば、決済するべきタイミングでもあるといえるでしょう。
ゴールデンクロスは、それまで平均的にマイナスだった買い方の損益がプラスに転じる分岐点ということになります。逆にいうと、それまで平均的にプラスだった売り方の損益がマイナスに転じる分岐点ともいえるのです。
デッドクロスとは
デッドクロスとは、短期の移動平均線が長期の移動平均線を上から下に交差して抜けること。ゴールデンクロスとは逆に相場の下落傾向入りのシグナルであり、売りのサインと見られることが多いでしょう。
デッドクロスは、それまで平均的にプラスだった買い方の損益がマイナスに転じる分岐点になります。逆にいうと、それまで平均的にマイナスだった売り方の損益がプラスに転じる分岐点ということもできるでしょう。
ゴールデンクロスやデッドクロスが出るときの投資家心理とは?
ゴールデンクロスやデッドクロスが出ると、FXや株式投資で大きな利益を出すチャンスです。しかし、なぜゴールデンクロスやデッドクロスは出現するのでしょうか。例えば、株式や為替を購入した後、価格が下がったとしましょう。当然、価格が今後上がると思って買っているはずですが、下がったということは、自分の読みが外れたということになります。このとき多くの方は、「どうして自分の読みが外れたのか」「早く損切りした方が良いのではないか」と不安な気持ちになるはずです。
では、そこから価格が回復して、自分が買った価格を上回ったら皆さんはどのような気持ちになるでしょうか。当然、多くの方は嬉しい気持ちになるはず。「自分の読みはやはり正しかった」「どこまで上昇するか楽しみだ」などと思われる方が多いでしょう。
つまり、人の気持ちというものは、損益がプラスになるかマイナスになるかによって大きく変わります。心理的に投資家が強気になる分岐点がゴールデンクロスで、逆に弱気になる分岐点がデッドクロスということです。以下にゴールデンクロスとデッドクロス、それぞれの買い方がどのような心理状態なのかをまとめました。
<ゴールデンクロスのときの買い方の気持ちの変化>
- ゴールデンクロス前…損益がマイナス状態なので、いつ損切りしようか考えている。
- ゴールデンクロス後…損益がプラスに転じるため追加投資を検討する。
<デッドクロスのときの買い方の気持ちの変化>
- デッドクロス前…損益がプラスの状態なので安心してポジションを持っている。
- デッドクロス後…損益がマイナスに転じるため、慌てて損切りを検討する。
このような投資家心理から、ゴールデンクロスは買いサインとなりデッドクロスは売りサインとなるのです。
ゴールデンクロスやデッドクロスの使い方
ゴールデンクロスとデッドクロスは、長短2本の移動平均線がクロスしたタイミングをエントリーもしくは決済のタイミングとする手法になります。ゴールデンクロスは、短期移動平均線が長期移動平均線を下から上に抜いたタイミング。移動平均線はローソク足の後を追って動きますので、短期移動平均線が長期移動平均線を上に抜いた時点では、すでにローソク足は上昇トレンドになっていることが多いと考えられます。したがって、ゴールデンクロスは展開エントリーに適しているタイミングとなるのです。また、売りのポジションを持っているのであれば、決済すべきタイミングでもあります。
デッドクロスはゴールデンクロスの逆で、短期移動平均線が長期移動平均線を上から下に抜いたタイミングです。売りエントリーに適しており、買いポジションを持っているなら決済すべきタイミングでもあります。
ゴールデンクロスやデッドクロスは、はっきりとしたトレンドが長く続くとき、エントリーや決済のタイミングを見極める上で役立ちます。しかし、トレンドがはっきりしないと、ダマシが多くなりがちな点に注意してください。
そのため、ゴールデンクロスで買いエントリーし、デッドクロスで売りエントリーするという単純な方法は、あまりおすすめできません。ゴールデンクロスとデッドクロスの有効な活用法について、2つを取り上げてご説明します。
他の指標の補助として使う
他の指標での判断補助とするというもの。例えば、下落トレンドから上昇トレンドに変わったと思われる初期の頃に、買いエントリーしたとします。この時点では上昇トレンドがまだあまりはっきりしていませんので、買いエントリーが正しいのかどうかを見極めづらいでしょう。
しかし、その後しばらく時間が経過し、レートも上昇してゴールデンクロスが発生したとします。この状況まで来れば、上昇トレンドが一段とはっきりしているはずです。したがって、「買いで持っているポジションは、そのまま継続する」という判断を下すことができるでしょう。
ダマシの多さでトレンドを判断する
ゴールデンクロスとデッドクロスでダマシが多くなる時期は、トレンドがはっきりしていない時期だと考えられます。トレンドがはっきりしない時期は、トレンド系指標はエントリーもしくは決済の判断に向きません。トレンドがはっきりしない時期のエントリーや決済の判断は、オシレーター系指標を使うようにしましょう。
ゴールデンクロスやデッドクロスと相性の良いグランビルの法則とは?
ゴールデンクロスやデッドクロスと相性の良い投資手法の1つに、グランビルの法則というものがあります。グランビルの法則は、アメリカの投資関係のジャーナリストであったジョセフ・グランビル氏によって提唱された法則です。もともと株式のチャートで売買タイミングを判断するために作られた法則ですが、FX取引でも使えます。グランビルの法則は移動平均線とローソク足の位置関係からエントリーもしくは決済のタイミングを判断し、買い・売りそれぞれ4通りの法則があることが特徴です。
グランビルの4つの買いの法則
グランビルについて、まずは買いの4つの法則をご説明します。
買いの法則①
レートや株価の向きが下落から上昇に変わりつつある移動平均線を、ローソク足が下から上に抜いたら買いと判断します。つまり、これはゴールデンクロスということです。移動平均線の向きが下落から上昇に変わるのは、レートが底を打って上がり始めた後になります。
ローソク足が移動平均線より上に出ると、買い方にとって有利になります。したがって、この法則のタイミングは買いを入れるのに適していると考えられるでしょう。
買いの法則②
移動平均線が上昇中にローソク足がいったん移動平均線の下まで下落した後、再度、移動平均線を上に抜いてきたら買いと判断します。この状況ではローソク足がいったん下がって反発していますので、押し目をつけた後に当たります。
また、ローソク足が移動平均線の上にあるため買い方に有利な状況です。よって、この法則は押し目のタイミングで買いエントリーするのに適していると考えられます。なお、すでに買いポジションを持っているなら追加で、購入するタイミングでもあるといえるでしょう。
買いの法則③
移動平均線が上昇中のときにローソク足が移動平均線の近くまで下落した後、反発した形です。この形も押し目の後に反発した形ですので、買いエントリーに適しているといえます。
買いの法則④
移動平均線が下落中、ローソク足が移動平均線から大幅に下に離れてから反発しだしたら買う法則。リバウンドによる上昇を取ることを目的としています。
グランビルの売りの4つの法則
続いて、グランビルの売りの4つの法則を見ていきましょう。
売りの法則①
レートや株価の向きが上昇から下落に変わりつつある移動平均線を、ローソク足が上から下に抜いたら売りと判断します。レートが天井をつけて下がりだしたことを確認し、売りエントリーする形です。まさにデッドクロスのことになります。
売りの法則②
移動平均線が下落中にローソク足が移動平均線に向かっていったん上昇し、移動平均線を上に抜いた後、再度、移動平均線を下に抜いたら売りと判断します。一時的な戻りを確認し、売りエントリーするタイミングとして使うことが可能です。すでに売りポジションを持っているなら、さらに売り増しするタイミングともいえるでしょう。
売りの法則③
移動平均線が下落中にローソク足が移動平均線に向かって上昇した後、移動平均線を越えずに再度下落したら売りと判断します。この法則も、一時的な戻りを確認した後で売りエントリーする場合に、タイミングを判断するのに使えるでしょう。
売りの法則④
移動平均線が上昇中にローソク足が移動平均線から大幅に上に離れ、その後に下がりだしたら売るという判断をします。売り法則①から③は順張り(じゅんばり)の投資手法ですが、この法則は逆張り(ぎゃくばり)の投資手法です。
ゴールデンクロス/デッドクロスの注意点
投資初心者でも見つけやすく使いやすいゴールデンクロスやデッドクロスですが、注意点もいくつかあります。例えば、移動平均線の交差が緩やかな場合は信頼性が低く、急な場合は信頼性が高いことが挙げられるでしょう。また、移動平均線は平均をとる期間が短いほど上下の動きが激しくなり、売買シグナルが多く発生するのも注意点です。
さらに相場のわずかな変動で頻繁にシグナルが変わってしまう、ダマシが多い点にも要注意。長期の移動平均線ならダマシは少なくなりますが、タイムラグが生じ、トレンド転換のシグナルが現れるのが遅くなります。こうした点から、ゴールデンクロスとデッドクロスは単独で使うより、他の指標の補助として使うのが良いでしょう。
まとめ
ゴールデンクロスやデッドクロスについてご説明しました。ゴールデンクロスやデッドクロスは見つけやすく使いやすいため、特に投資初心者にとっては非常にありがたいテクニカル分析の方法でしょう。しかし、ゴールデンクロスやデッドクロスにはさまざまな注意点があり、単独で使うことはあまりおすすめできません。あくまで、ゴールデンクロスやデッドクロスは他の指標の補助として使うようにしましょう。
監修者プロフィール
渡辺 智(ワタナベ サトシ)
FP1級、証券アナリスト。
<プロフィール>
大学商学部卒業後は某メガバンクに11年勤務し、リテール営業やプライベートバンカー業務、資産運用コンサルティング(投資信託、保険、債券、外貨預金など)、融資関係業務(アパートローン、中小企業融資)などを経験。銀行在籍中、2度の最優秀営業賞を受賞。銀行在籍時の金融商品販売額は500億円を超え、3000人を超える顧客に金融商品営業を行う。その後、外資系保険会社でコンサルティング営業として従事し、現在は業務経験・知識を活かして金融ライターとして独立。難しい金融をわかりやすく伝えことをモットーに活動中。