FXで得られる利益にはスワップポイントというインカムゲインがあります。今回は、スワップポイントについてご説明します。
スワップポイントとは
スワップポイントは、FXだからこそ期待できる利益です。金利水準の高い新興国通貨などは、スワップポイントの高さが投資家の間で人気のようです。ただし、スワップポイントは状況によってマイナス(損失)になることもあるので、しっかりスワップポイントについて理解する必要があります。スワップポイントとはどういったものなのか説明していきましょう。
FXとは
まず、FXとは外国為替証拠金取引のことを言います。FXにはレバレッジと言う仕組みがあります。レバレッジとは、「テコの原理」のことで、取引する通貨の総代金は必要とせず、少額でも投資できるため、投資効率を高める特徴があります。
そして、FXにはキャピタルゲインだけではなくインカムゲインもあります。
FXにおけるキャピタルゲインは、通貨の売買で得られる為替差益を指します。インカムゲインとは、株式や債券、不動産などを保有することで、継続的に得られる利益のことを言います。FXで得られるインカムゲインが、主にスワップポイントになります。
FXは、異なる2つの国の通貨を利用して利益を狙う投資商品です。為替の値動きによって、キャピタルゲインやインカムゲインを狙う金融商品になります。多くの投資家に利用されている金融商品ですが、意外と気づいていないのが、FXでは通貨の交換を行うと同時に金利の交換も行われることです。なぜ、金利の交換を行うのか。これは通貨によって金利が違うため、金利の差額を調整しないと不公平になってしまうからです。
ただ、金利の交換と言っても、あまりイメージできない方もいるでしょう。例えば、日本円の金利が-0.10%、アメリカドルの金利が0.25%だとしましょう。日本円から米ドルに換えた場合、米ドルを保有することになります。当たり前のことですが、スワップポイントを理解するためには非常に重要なポイントになりますので確認しておいてください。
米ドルに換えたということは、米ドルの金利は0.25%なので金利が0.25%受け取れますが、日本円に戻した時の金利は-0.10%なので、この0.25%の金利から日本円の-0.10%を払わなければいけません。
今回のケースの場合、日本円の金利がマイナスなので結果的に0.35%の金利を受け取ることができます。
このことを金利差調整額と言い、別名「スワップポイント」と言います。
つまり、低金利の通貨を売って高金利の通貨を買うとスワップポイントを受け取れて、逆に高金利通貨を売って低金利通貨を買うとスワップポイントはマイナスになってしまうのです。
スワップポイントの主なメリット
スワップポイントには、様々なメリットやデメリットがあります。まずは、メリットから見ていきましょう。
金利差がプラスであればポジションを持っているだけでほぼ毎日利益を得られる
キャピタルゲイン狙いのトレードは、大きな利益を狙うことが可能です。しかし、大きな損失を被ってしまう可能性もあります。大きな損失を繰り返して出してしまうと、投資資金がなくなってしまう可能性があるでしょう。キャピタルゲイン狙いのトレードは、決して安定しているとは言えません。
しかし、スワップポイント狙いのトレードでは、長く持つほどスワップポイントが貯まります。ロスカットに気をつけなければなりませんが、比較的安定して運用できることはスワップポイント狙いの長期トレードの大きなメリットと言えるでしょう。
海外に通貨を交換するだけで金利がもらえる(売買の必要がない)
スワップポイントをもらうために、キャピタルゲインのように買ったり売ったりする必要はありません。保有しているだけでスワップポイントはもらえます。ただ、FXではロスカット(強制決済)・ルールがあるため、一定の損失を出してしまうと強制的にポジションが決済され、受け取ったスワップポイントを超える損失が発生しかねません。キャピタルゲイン狙いのトレードのように頻繁にチャートを確認する必要はありませんが、ある程度チャートや証拠金維持率を確認することは必要です。
配当と比較して収益機会が多い
株式投資には配当があります。企業によりますが、配当は年に2回受け取れるケースが多いです。一方、スワップポイントは毎日発生します(※)。配当と比較して収益機会が多いのは、スワップポイントの大きなメリットでしょう。
(※)土曜、日曜、祝日の場合は、金融機関がお休みのため、スワップポイントは付与されません。この日の分のスワップポイントは、木曜日の朝に付与されます。
長期で運用するほど大きな利益に
スワップポイントは、毎日受け取れる収益です。もちろん、対象通貨の政策金利が0%以下になってしまうとスワップポイントはもらえません。しかし、現在の株式市場や為替市場を考えると、主要国の政策金利が0%以下になってしまう可能性は極めて低いと言えます。
また、高金利通貨であるトルコリラや南アフリカランド・メキシコペソなどで運用をすれば、高いスワップポイントを長期にわたって受け取ることが可能です。長期で持つほど着々と貯まるのは、スワップポイントのメリットと言えるでしょう。
スワップポイントの主なデメリット
通貨によっては金利差を支払うこともある(マイナススワップ)
冒頭でご説明しましたが、取引する通貨によってはスワップポイントを支払わなければなりません。例えば、現在、米ドル円で取引する場合は「買い」で取引をすればスワップポイントはもらえます。逆に「売り」で取引するとスワップポイントは引かれてしまうのです。このように、スワップポイントを支払わなければいけないことがあるのはデメリットと言えるでしょう。
スワップポイントで得た利益も課税対象
スワップポイントで得た利益は課税の対象です。キャピタルゲインと同じく国内FXの場合、スワップポイントで得た利益に対して20.315%の税率がかかります。利益なので税金がかかるのは仕方がない面もありますが、このことはデメリットに感じる方が多いでしょう。
高金利通貨は為替変動リスクが高いケースも多い
スワップポイント狙いのトレードの大原則は、ロスカットに引っかからないことです。スワップポイント狙いのトレードにおいては、ロスカットに注意しながら、証拠金維持率を高くしてトレードするのが非常に重要です。
ただ、どんなに証拠金維持率を高くしても相場は急変動することがあります。この急変動に巻き込まれてロスカットに引っかかってしまう可能性は、気をつけていたとしてもゼロではありません。特に、トルコリラや南アフリカランド・メキシコペソなどの高金利通貨は、米ドルなどの先進国通貨に比べ値動きが激しいのでより注意が必要です。ロスカットに引っかかってしまう可能性があるのは、スワップ狙いのトレードの大きなデメリットでしょう。
大きな利益は狙いにくい
スワップ狙いのトレードは、コツコツとスワップポイントを積み重ねていくトレードになります。そのため、短期間での大きな利益は望めないでしょう。もちろん投資資金を大きくすれば、1回あたりスワップポイントも大きな利益になる可能性があります。しかし、それだけリスクも高くなります。また、現在の金利情勢では投資資金を大きくしないと、スワップポイントで大きな利益を短期で上げるのは難しいと言えそうです。
スワップポイント発生のタイミング
スワップポイントに似たものが、外貨預金の金利です。外貨預金の金利の場合、外貨普通預金に関しては2月と8月に受け取れます。外貨定期預金に関しては、満期が来た時に金利を受け取るのが一般的です。
では、FXのスワップポイントはいつ受け取ることができるのでしょうか。FXのスワップポイントは、ロールオーバーをすることによって受け取れます。ロールオーバーとは、ポジションを保有したまま翌営業日に繰り越すことです。
FXでは、ニューヨーク市場が終了する時にロールオーバーが行われ、スワップポイントが精算されます。大抵のFX会社では、毎営業日の早朝にメンテナンス時間を設けているのが一般的です。スワップポイントは、このメンテナンス時間が終わった時に受け取れます。なお、FXの取引期間は、夏と冬で異なりますので注意しましょう。
<夏時間>
3月の第2日曜日~11月の第1日曜日
<冬時間>
11月の第1日曜日~翌年3月の第2日曜日
また、金利は土日も関係なく発生します。この土日分のスワップポイントはいつもらえるのか気になる方も多いでしょう。各FX会社によって取り扱いが異なりますが、ほとんどのFX会社では木曜日に土日分のスワップポイントをつけてもらえます。土日分のスワップポイントを受け取れる木曜日は、3日分のスワップポイントをもらえますのでしっかり覚えておきましょう。
スワップポイントがもらえる曜日も含め、ご自身が使うFX会社のスワップポイントのルールを、しっかり確認しておきましょう。
スワップポイントで運用するコツ
続いて、スワップポイントで運用するコツを3点ご紹介します。
投資する通貨ペアを分散させる
スワップポイント狙いのトレードは、一般的にトルコリラやメキシコペソなどの高金利通貨で行うのが良いと言われていますが、決してそうとも限りません。もちろん、高金利通貨ペアでスワップポイント狙いの長期トレードを行えば、多くのスワップポイントを受け取れます。しかし、高金利通貨である新興国通貨は、米ドルやユーロなどの先進国通貨に比べ値動きが激しくリスクが高いのです。
リスクが高い高金利通貨だけでトレードすると、ロスカットに引っかかる可能性や大きな損失が出る可能性が高くなります。そのため金利が低くても、米ドルなど先進国通貨ペアにも分散して投資するようにしましょう。
証拠金維持率を大きめに維持する
スワップポイント狙いのトレードをする際は、証拠金維持率を大きめに維持するようにしましょう。証拠金ギリギリまでトレードに資金を回せば、多くのスワップポイントを受け取ることができますが、その分リスクが高くなります。スワップポイントを受け取るのも大切ですが、前述したようにロスカットなどに引っかからないことが重要になります。スワップポイント狙いのトレードをする際は、安全性を重視して証拠金維持率は高くするのがおすすめです。
長期運用する
スワップポイント狙いのトレードは、長期運用がおすすめです。特に、現在の金利情勢では先進国通貨ペアの場合、1回あたりにたくさんのスワップポイントをもらうのは望めません。しかし、長期で保有すれば、1回あたりに受け取れるスワップポイントは小さくても、やがて大きな金額になります。スワップポイント狙いのトレードは、短期で利益を狙うのではなく長期で考えるようにしましょう。
まとめ
FXのスワップポイントについて、ご説明しました。FXで得られる利益は、どうしてもキャピタルゲインに目が行きがちです。しかし、スワップポイントもFXで得られる立派な収益源となります。また、キャピタルゲインと違ってスワップポイントは、安定的な収益源としても重宝するでしょう。ここで取り上げた内容を参考にスワップポイントについて理解を深め、役立ててみてください。
監修者プロフィール
渡辺 智(ワタナベ サトシ)
FP1級、証券アナリスト。
<プロフィール>
大学商学部卒業後は某メガバンクに11年勤務し、リテール営業やプライベートバンカー業務、資産運用コンサルティング(投資信託、保険、債券、外貨預金など)、融資関係業務(アパートローン、中小企業融資)などを経験。銀行在籍中、2度の最優秀営業賞を受賞。銀行在籍時の金融商品販売額は500億円を超え、3000人を超える顧客に金融商品営業を行う。その後、外資系保険会社でコンサルティング営業として従事し、現在は業務経験・知識を活かして金融ライターとして独立。難しい金融を分かりやすく伝えることをモットーに活動中。